あの頃とは少し違った果物狩りへ
●228 × 157 mm
●オールカラー
●平綴じ/48P
●デザイン:横澤進一
●2021年発行
●https://youtu.be/HNHyhwyNtWE
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子供の頃、部活終わりによく児玉くんと夏はプラムを捥ぎながら秋は柿を捥ぎながら歯で皮を削いでは畑にぷっと吹き出しながらもしゃもしゃと食いながら帰った。皮が赤くてきれいなやつより茶色っぽい方が中が甘くておいしいよと児玉くんが教えてくれた。果物を触ると、食べると、楽しい気持ちになった。
今年もコロナで実家には帰れなかったというか帰らないようにしたのだが、母の日にふと両親が妻と初めて会った日のことを思い出した。東京のアパートまではるばるやってきてまず何を言うのかと思えば、にこにこと酒を飲むだけの父の隣で母がおもむろに「食べ物は割と果物が好きなのでなるべく食べさせてあげて下さいね」と言った。まあ親にしてみれば動物園の飼育係と同じようなものだなと苦笑したことを思い出した。その勢いで古いアルバムをひっぱり出してみると、幼稚園の遠足で梨狩りに行ったときの写真が目に止まった。隣に写っている母の顔はなぜかボールペンでぐるぐるに塗りつぶされていて、きっと気に入らない表情だったのだろうが、なにもそこまでしなくてもと思いまた可笑しくなった。
あれから30年近くの時間が過ぎてあの頃の親と同じくらいの、血圧の薬を飲んでいるとグレープフルーツを食べてはいけないなどということを知る歳になった。
注射も打ったことだし今年の冬はいつものように柚子を拾いに出かけようかと思う。
果物の形、色を見ると、想像すると、少し気が紛れる。