● https://youtu.be/F7uflZmgR1M?si=dZwQmuUYaCJWEUcF
●281×210×28mm
●カラー
●ソフトカバー/304P
●デザイン:横澤進一
●2025年発行
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『墓の先』
その日、いつもの土地で珍しく方角を見失った。陽が暮れかけ、空が朱色に染まり始めた焦りで、足早に遠くに見えた人影に近づき尋ねた。
この先の墓を過ぎると見通しのよい道に繋がると教えてもらい、その人が指差す方向にぼんやり歩き出した。
細く続いた畦道が途切れ、藪を掻き分けて進むと、墓地の中だった。裏手にあたる曖昧な隙間から入ってしまっていた。
卒塔婆が風で擦れる音だけが時折響く無人の敷地をしばらく彷徨い、本来入るべき正面から墓地を後にすると、時間がまたいつも通り流れ出した。
そこからしばらく、眺めの中に墓を気にしながら歩くと、当然、墓は至る所から、私を含めた土地を見ていた。
その気配は、見ることは、見られることと告げているようだった。
地に溶けた無数の者たちの層に、生きて立っている私の身体。呼吸が混じり合い循環し、土地が成されていることを実感した。
私はその時、その時だけの、存在の面影に会釈をするように、墓の風景を見た。